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ぼくのいえには、ニセサンタがやってくる。
サンタさんのじゃまをする、すっごくいやなやつだ。
ぼくがほしくないものをわたすために、
いえにわさわざくるサンタさんのニセモノだ。

おとうさんとおかあさんがねたころに、
ニセサンタはぼくのへやにそうっとはいってくる。

きょねんは『かくへいきのスイッチ』っていうのをもってきて、これをおしたらせかいがほろびるといって、おすかおさないかをえらばされた。

ぼくはおさなかった、ニセサンタにはまけない。

ニセサンタをおいかえしたら、ほんとうのサンタさんがきてくれる、だから、ニセサンタなんてこわくないんだ。

おとうさんとおかあさんがねた。

ぼくはおとうさんとおかあさんがねたのをかくにんして、へやでねたふりをしている。

ぼくがほんとうにねむるのをまって、ニセサンタはやってくるんだ。

もうねむたい。

ニセサンタがこなければ、すぐにねられるのに。

ニセサンタなんてだいっきらい。

「きたってぜったいうけとらないぞ」

そうぼくがいったとき。

ギシィッ、

ろうかであしおとがした。

ギシィ、ギシィ、ギシィ

ぼくのへやにちかづくあしおと。

こんなふうにくるのは、あいつしかいない、ニセサンタだ。

ギィッ、バタン。

「ねちゃったかな。ニセサンタがきたよ」

ぼくはバッ、とふとんからとびおきて、でんきをつける。

「きたな、ニセサンタ。こんどこそおいかえしてやるぞ」

ニセサンタは、まっくろなふくにマスクをつけて、テレビでみるにんじゃみたいなかっこうだ。

ニセサンタはぼくにいう。

「まぁまぁ、これがおれのしごとなんだ。さぁ、いらないものをこんどこそうけとってもらうぞ」

ぼくはまけない、いいかえす。

「なにをみせられたって、おまえからはうけとらないぞ」

ニセサンタはゴホゴホとせきこむ。

「そういわないで、これをやんないと、クリスマスがおわらないんだから」

ぼくはニセサンタをじっとみて、

「いいよ、いらないっていえばかえるんでしょ、ほんとにいやな、ニセサンタ」

はっはっは〜、とわらうニセサンタ。

「よくわかってるじゃないか、ことしのプレゼントは、これだ」

そういうとニセサンタは、いっぽんのしろいぼうをポケットからとりだす。

「これなーんだ、わかるかな?」

ニセサンタはそういうと、そのしろいぼうにひをつけようと、ライターをちかづけて、くちにもっていき、くちからはなして、ハーッ、といきをはく。

「わかった!ゴールデンバットだ」

ぼくはニセサンタにいわれるまえに、いってやった。するとニセサンタは、

「よくわかったね。これはタバコだよ。めいがらをきいたつもりはないんだけどねぇ。いっぽん、すう?」

ぼくはいった。

「いらない。ぜったいにすっちゃだめだって、ママに言われてるもん」

ニセサンタは、そんなぁ〜、せっかくのプレゼントが〜と、ガッカリしたあとで、ぼくをみて、タバコにひをつける。

「これをすうと、どうなるのかな」

ぼくはいう、

「はいがまっくろになって、すごくからだにわるいって、ママがいつもいってるもん」

ニセサンタは、ぼうをてもとでゆらし、チッチッチ、アマイアマイ、といって、ぷかーとタバコをふかす。

「それだけがこわいんじゃないよ。これはね、こどもがすうと、おとなになってもずぅっとやめられなくなるんだ。からだにいくらわるくても、やめたほうがいいといわれても、こいびととけんかになっても、どんなときでも、これがなくちゃいきていられなくなるんだ、いっぽん、すわない?」

ニセサンタはそういって、タバコのはこをてでふってぼくがつかめるように、はこからいっぽんとびださせてみせる。

「そんなもの、いらない」

ぼくはニセサンタのいってることがこわくて、なきそうになってしまう。

「ほんとうに、いらないんだね?これをすうときもちよくもないのに、つぎのいっぽんがいつすえるか、どこですえるか、そればっかりかんがえてソワソワするんだよ。これをすわないひとといるときは、いつぬけだしていっぽんすうか、そればかりになるんだ。ためしにどう?」

ぼくはしつこいニセサンタをおいかえすために、おおごえをだした。

「いらないったらいらない!ニセサンタなんて、かえっちゃえ!」

するとどうしたことか、おかあさんが、

「どうしたの」

としんぱいそうなこえをだして、かいだんをあがってくる。

ぼくだけでおいかえすつもりだったのに、きょねんとおなじだ。

「ここまで。わあ、またうけとってもらえなかったね、つぎは、うけとってもらえるかな。ニセサンタはワルモノのくににかえらないと〜」

そういうといそいでニセサンタはぼくのへやからでていく。

いれかわりではいってくるおかあさん。

ぼくはおかあさんにいう。

「ぼく、ニセサンタをおいかえしたよ。タバコなんて、ぜったいにすわないよ」

おかあさんはぼくをだきしめて、

「よしよし、それがいいわよ。きょうはもうねなさい。あのとんでもないニセサンタがもうこないように、よくいっておきますから」

といって、ぼくをふとんにねかせた。

「あなたのかち。ちゃんとおかあさんが、ニセサンタをたいじしてあげますからね。もうねなさい。ほんもののサンタさんは、いいこのところにはかならずくるから」

そういわれて、ぼくはめをつむる。

「いいこ、いいこね、こんなにちいさいのに、よくおいかえしたわね」

ぼくがねむりかけたのをみて、おかあさんはそっと、ぼくのへやからでていく。

ほんもののサンタさんがはやくきてくれますように。

そうおもってよこになっていると、ぼくはねむってしまった。ねむるときに、ちいさなこえで『メリークリスマス』といわれたきがした。

おきると、リビングのクリスマスツリーの下に、サンタさんからのてがみと、おおきなプレゼントがおいてあった。

なんでサンタさんはぼくのほしいものがわかるのかな、うれしくてぼくはないちゃいそうになる。

でも、よくみるとそのとなりにニセサンタからのプレゼントがあった、ゴールデンバット、ぼくがこのよでいちばんいらないものだ。

なんでニセサンタは、ぼくのきらいなものがわかるのかな。

ぼくはニセサンタがサンタさんといっしょにいらないものをおいていったのをみて、それをてにとって、おかあさんにわたした。

「これ、いらない」

するとおかあさんは、

「そうね、もういらないものよね」

とそれをてにとりゴミばこにすてた。

おとうさんはいつもどおり、むずかしいかおをして、しんぶんをよんでいた。

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by ren_with_parfait | 2016-12-24 22:24 | 小説 | Comments(0)

「凛として2016春」

(1)

誰かが私を見ている。
そんな気がして振り向いた。
小鳥のさえずり、気のせいかもしれない。

フウは温かな、2-Bの教室で春の陽ざしを感じていた。

三月、フウにはどうでもいいことだ。
ただ窓から覗く校庭の景色がいつにもまして、
微熱を帯びたかのように、学校中が騒いでいるだけ。

フウは机にヒジをつき、サッカーに盛り上がる校庭の生徒と、
教室の黒板に目を凝らす同級生との間にいて、
空気を自分の居場所にしていただけだった。

「おい、おい、聴いてんのか」

彼は、クラスメートの呼び声に、ふと目を休めた。
いっしゅん、閃きの様に視界が開けて、
彼は教室の空気の中に引き戻された。

居心地が悪い。

クラスメートは後ろに向いてフウに話す。

「……あのさ、お前の席の隣の子、転校したのかな」

「何のこと?」

興味のない冷淡な顔で、フウは一言そう返す。

「何言ってるんだよ、あの子と、出来てたんだろ」

その言葉を聴いた時、フウはつい今まで見続けていた光景が、
鮮やかな季節特有の儀式的な熱気ではないように思えた。
学校全体が大きな竜巻に飲み込まれていくような、
恐怖とも不安とも重なり合う焦燥感に駆られた。

「だから、何のこと?」

フウは表情を変えず、もう一度そう答えた。

「だからさ、お前、あの子と付き合ってたんだろ?」

……知らない、知らない。
そんなことがあったなんて、俺は知らないんだ。

彼は内側でそう呟いて、手でクラスメートの視線を払い、また校庭に目を移した。

「チッ、またそれかよ、知らないからな」


(2)

小鳥のさえずり、突然くしゃみが出た。
病院、病院。
診療部門は、何だっけ。

時限が変わったのか、サッカーをやめて校庭から去る生徒と、
待ち望んだかのようにユニフォームを着て現れた野球少年のたちを視ながら、
フウはそんなことを心で念じた。

病院、病院……。
診療部門は、診療部門は……。

半ば呪文のように、そう心で呟くフウの意識はもうろうとしてきて、
先ほどのクラスメートの椅子を軽く蹴って、フウは彼を呼んだ。

「なんだよ、フウ、話す気になったか?」

質問には答えない。
こちらが聴きたいのだ。

「診療部門は?」

空が、パァッと明るくなる。
少し陰っていた雲が晴れ、揺れる陽ざしが窓から射しこむ。
気持ちがいい。

「そんなの、心の病とかそういうのだろ、学校来てないんだから」

心の病……?
神経科、心療内科、精神科……。
どれも、フウの記憶にピンと来るものはない。
特に、神経科と心療内科のセンは薄かった。
入院施設だ、フウが最後に彼女を見た時。
彼女は確かに重症で横たわっていた。

「桜も、咲き出してるのにな」

クラスメートは、くすぐったそうに笑う。

「それが何の関係があるんだよ」

そう言うとまた、前を向いてクラスメートは黒板に目を向けた。
彼はそのまま、話しはじめる。

「なぁ、フウ」

「ん?」

「これは夢だと思うよな?さすがのお前でも」

「ああ」

「ならいいんだ。分かっているなら、それでいい」

彼等の教室には、フウと、そのクラスメートしか居なかった。

クラスメートの名前はスイと言う。


(3)

黒板の前に、何かが立っている。
不吉な黒い影。
フウにとって教師というのは不吉の象徴。
病の根源、忌むべき者。
それと対照的な校庭で運動をする生徒。
温かな陽ざし、小鳥のさえずり、花粉症。

スイは、フウに告げなければならないことを、
言わずにいた、そして言わない存在としてそこに在った。

フウにとって、スイはただの友達で、
ここに自分たちがいることの意味を彼が判らなくても、
フウには関係がないことだというのを、
スイは分かっていた。

「産婦人科」

スイは、何かを見て目を丸くしてるフウを見て、
そう言った。

「産婦人科からの、帰り道に、何があった?」

「何も」

フウは淡々とした声で、だが目だけは強く見張りながら、
教室の窓から校庭を眺めていた。

もう学校の授業も五限が終わっていて、
校庭にはスポーツを楽しむ者はいない。
それだけの長い間、フウはずっと校庭を眺めていた。

クラスメートであるスイも同じく、二人きりの教室に居た。

スイは座っている椅子を横向きに動かして、
フウが眺めているグラウンドを見た。

「産婦人科からの、帰り道に、何があった?」

もう一度同じ質問をしたスイに、フウは何も答えなかった。

フウの隣の机の上には花が置かれていた。

――フウがずっと眺めていたグラウンド。
そこには、確かなハルの足音があった。

教室の扉が開く音がすると、一人の女の子が、その机の席に座った。

手には赤ん坊を抱いていた。

フウは校庭を眺めたまま、そのことに気がつくことが出来なかった。

ひと刹那、時が流れた、
スイがまたフウに声をかけるまで、フウの時間は静止していた。

「今、座っていた女の子、出来てたんだろ?」

質問には答えない。
こちらが聴きたいのだ。

「診療部門は?」

スイは椅子から立ち上がると、
彼をグッと自分の方に引き寄せ、フウの耳に口を当て、呟いた。

「精神科だよ」

(END)

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by ren_with_parfait | 2016-03-30 02:44 | 小説 | Comments(0)